不眠症とは何か~不眠との違い
不眠症は「睡眠障害」とも言い、以下のいくつかのタイプにわかれます。
・寝つくのに時間がかかる「入眠障害」
・寝ついても夜中に何度も目がさめてしまう「中途覚醒」
・寝つきはよいが、ふだんより数時間早く夜明け前に目がさめる「早朝覚醒」
・よく寝たはずなのに眠りが浅く、ぐっすり眠った感じがない「熟眠障害」
そして肝心なのは、このような状態が1ヶ月以上などの長期間にわたって持続することにより、精神的苦痛を感じたり社会的に支障をきたす状態になってはじめて「不眠症」と呼ばれることです。
「この1~2日は、仕事のストレスで眠れない」というのは単なる「一過性不眠」にとどまり、「不眠症」ではないわけです。
また、睡眠時間が平均よりかなり少ないからといって、不眠症と診断されることもありません。
あくまで、本人がいまの睡眠時間で安眠感を得られているか、日中の生活に問題が生じていないかどうかが、判断のポイントになります。
そもそも睡眠時間は、人によっても大きく差のあるものです。
睡眠時間は、かりに平均とされる7~8時間に比べて短くとも、日中に強い眠気を感じるといったことがなければ特に問題はない、とされています。
また高齢になってくると、睡眠時間は徐々に短くなってくるのが普通であり、高齢者が無理に平均睡眠時間を確保しようとすると、逆に不眠に悩まされることがあります。
それでは、不眠を超える「不眠症」は、病気と言ってよいのでしょうか?
はい、これはれっきとした病気となります。
ただし、日本人の5~10人に1人が不眠に悩まされるなか、誰にでも起こりうる、ごく普通の病気なのです。
不眠症かもしれないと思い当たるならば、心療内科や神経内科、内科や精神科の専門医の診察を早々に受けるべきです。
病気・心身の異常の症状としての不眠症
不眠症は、単純に眠りが得られなかったり途切れたりすることにとどまらず、「特定の心身の異常や病気に伴う一症状」として、起きる場合もあります。
このような場合は、専門的な治療が必要になります。
該当するケースはいろいろありますが、以下にいくつかを示します。
・うつの症状としての不眠症(睡眠障害)
うつ病の場合、眠れない・夜明け前に目が覚めるといった不眠症状が、よくみられるところです。
傾向として、睡眠不足のために午前中は無気力で具合が悪く、夕方から夜にかけて元気を取り戻す人や、眠れないままに一日中ベッドの中で過ごす人が多くいます。
米国の話になりますが、不眠症の人はうつ病の発症リスクが通常の人に比べおよそ3.5倍高まる、という調査結果があるそうです。
・うつ病と薬~投薬治療を患者目線で知る
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)
中高年の肥満男性などに多い病気で、眠っているときに舌がのどの奥に落ち込んで気道をふさぐため、呼吸が苦しくなり中途覚醒します。
定義としては、睡眠中の10秒以上の呼吸停止(無呼吸)が5回以上繰りかえされる場合がSASに該当します。
この病気の症状として、倦怠感や日中の強い眠気・それに起因する運転事故の増加などがあげられています。
・周期性四肢運動障害
眠っているときに手や足がピクピクと勝手に動くため、中途覚醒してしまいます。
眠りの浅いときに症状が起きて自分でわかる場合もあれば、まったく気がつかない場合もあります。
原因ははっきりしていませんが、特に高齢者に多い症状です。
・むずむず脚症候群
日本では1990年代に入って広く知られるようになった、神経の病気です。
ふとんに入ったときに、脚がむずむずした虫がはいあがってくるような不快な感覚が生じ、眠りに入ることができなくなります。
原因ははっきりしていませんが、この病気からストレスや睡眠障害からうつ病などにつながることもあります。
今日では症状に応じた投薬治療によって、かなりの改善が見込めるようになっています。
不眠症 さまざまな原因
不眠症には原因がありますが、その原因自体はさまざまに分かれています。
上述のとおり、うつ病などの精神性疾患や、あるいは他の器質性の病気の一症状としてあらわれる場合もありますし、神経性の症状や悩みやストレスなど、心理的な要因が原因となって起きる場合もあります。
加齢による場合もあれば、深夜の周囲の騒音など外的環境がきっかけとなる場合もあります。
あるいは深夜勤務が続いたり、夜型の生活を余儀なくされることによって体内時計が狂い、生活リズムが乱れてしまったために発症するケースもあります。
降圧剤や抗がん剤などの薬を常用していることで睡眠が妨げられるケースもありますし、アルコールを飲んで眠る生活を長く続けた結果、依存症から不眠症へとつながったというケースもあります。
不眠症の治療~生活習慣の改善
不眠症の治療は、不眠の原因が何なのかを専門医の診断によって特定したうえで、それを除く生活習慣を確立することを、まずは目指します。
具体的には、寝る前の数時間、アルコールやカフェイン(コーヒー・緑茶など)を避けるようにします。
また、寝る前に音楽をきいたり、あるいはぬるめの風呂に入るなどしてリラックスすることを心がけます。
リラックスとはいっても、夜遅くにサスペンスやホラー映画などを見ると神経が興奮し、脳も覚醒してしまって逆効果なので、避けましょう。
睡眠のためという点では、寝心地のよいマットレスや枕などの寝具・やわらかい光の間接照明・着心地のよいパジャマなどに配慮して、入眠環境を整えるようにすることも大切です。
日中はウォーキングなどの運動によって体を適度に疲れさせておくことが、夜の熟睡につながり睡眠の質を高めることからもオススメです。
眠りのための生活環境を整えるという点で意識してほしいのは、上記のように睡眠を阻害する刺激をとりのぞくことと同時に、起床時間や食事時間・睡眠時間など一日の主なイベントをこなす時間帯を、できるだけ一定にすることです。
夜の一定時間になるとカラダが自動的に眠りを欲するよう、意識して生体リズムを整えていくわけです。
朝は起床時間を決めて、起きたらすぐに外にでて日光を浴びる、といったように、カラダに一定のリズムを刻み込ませることが大切です。
食事では、体の代謝にかかわるたんぱく質・ビタミン群をきちんととりたいもの。
また、夕食は眠りにつく3時間前までには終わらせるようにします。
不眠症の治療~投薬治療・医療機関の受診
生活習慣の改善以外の治療方法として、睡眠薬の服用による薬物治療があります。
薬物治療というと、反射的に「薬を常用しているとくせになる」「薬がないと眠れなくなるのではないか」といった、いわゆる「薬に耐性ができる」ことや副作用などについて、つい考えがちですね。
病院で診察を受け処方される睡眠薬においては、それは誤解であるといってよいでしょう。
不眠症の治療薬のほとんどはベンゾジアゼピン系という種類で、これは医師の指示どおり服用している限りは体内に耐性ができることもなく、薬がクセになるということはありません。
指示にしたがって服用している限り、副作用などもまず心配しなくてもよいでしょう。
ただし例外として、処方の初期段階において翌日まで薬の効き目が残ってしまい、眠気や倦怠感、体のふらつきを感じるときがあります。
このような場合は、医師に相談して薬の量や種類を変えてもらうことになります。
ちなみに、ドラッグストアなどで市販されている睡眠薬は、正式には「睡眠改善薬」であり、病院で処方される睡眠薬とは成分も異なっています。
市販の睡眠改善薬は、風邪薬のなかにも入っている「抗ヒスタミン剤」が配合されていますが、これはアレルギーの薬の副作用となる「一時的に眠気をもたらす作用」を利用したものです。
あくまで、「睡眠改善薬」であって「不眠症の治療薬」ではないことに注意しましょう。
また漢方薬をイメージされる方もいるでしょうが、漢方薬は睡眠を誘発する作用というより、不眠の原因となるストレスや、イライラした気分を除く作用が主に含まれています。
不眠対策の代表的な漢方薬の成分としては「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」「加味逍遙散(かみしょうようさん)」などがあります。
服用による脱力感などの副作用の心配をしなくてよいという点は、漢方薬のメリットです。
病院で処方される睡眠薬はいくつかのケースにわけられ、病状に適した薬が処方されることになります。
すぐに効いて眠りに入ることができ入眠障害・中途覚醒に適した「超短時間型」および「短時間型」、1時間程度で効き目があらわれて効果が比較的長く続くため、早朝覚醒や中途覚醒に適した「中間型」、そして非常に緩やかに効果が現れ効き目も長い時間続く「長時間型」、があります。
眠れない日が何日も続く…という場合は、それが不眠症であるか単なる不眠かに関わらず、思い切って専門医に相談することが大切です。
なぜなら、医師の診察によってはじめて、病気なのかどうかや原因などが特定され、対処すべき正しい方向性が明らかになるからです。
不眠は現代人特有の悩みであり、最近は「睡眠外来」「不眠症外来」を設ける病院も珍しくなくなってきています。
長期間にわたって生活の質を下げないためにも、思い当たったときには早期の受診を心がけましょう。
ご参考までに、全国の睡眠医療に関わる医療施設・認定医を記したサイトを掲載しておきます。
・全国診療施設紹介(いびきと睡眠時無呼吸症候群(SAS))
・
睡眠医療認定医リスト(日本睡眠学会)
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